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オオミズナギドリ予備調査

2004年から釜石市三貫島において、2008年からは山田町船越大島においてオオミズナギドリ生態調査を継続して行ってきました。毎年の繁殖状況や育雛期の採餌行動等についての知見が得られています。今回の震災により、沿岸海洋生態系が大きな擾乱を受けたと考えられますが、海洋高次捕食動物であるオオミズナギドリはこの環境変化にどう対応するのでしょうか。今年の8月末から9月にかけて、例年どおり2つの島でオオミズナギドリ調査を実施する予定でいます。しかし、地震と津波によって島がどう変わってしまったのか、それらをまず確認する必要があります。そんな理由から、今回の予備調査を実施した次第です。

船越大島(7月6日上陸)

船越漁港から漁師さんの船をチャーターし、10分ほどのところにあります。本土に面した側は一部植生が枯れていて、海面から5メートルくらいのところまで引き波の水が達した模様でした。

沖に面した側も見ましたが、こちらは特に変わった様子はなく,波は植生にまで達しなかったようでした。オオミズナギドリの繁殖巣がある一帯は以前と全く変わっていません。

毎年モニタリングしている77巣を調べたところ、71%に相当する55巣で成鳥を確認することが出来ました。いくつかの巣では卵も見え、抱卵期が無事始まった模様です。昨年の同じ時期に調べたときには60%の巣で成鳥を確認しているので、今年は上々の滑り出しであると言えます。

泊まり込みの調査の際、私たちがテントを張る廃墟が島の最上部にあります。今から40年前にブロックを積みあげて作られた小屋なので地震で倒れているのではないかと心配していたのですが、いくらかヒビは入っているものの無事でした。今年もいつもどおり調査する事が出来そうなので、ホッとしました。

三貫島(7月7日上陸)

仮宿漁港から漁師さんの船で15分ほどで到着しました。上陸地点から繁殖地に入る入り口の鳥居の一部がもげて脇に転がっていたことから、ここまで水は達した模様です。しかし、肝心の集団営巣地は無事でした。70巣を調べた所、79%に相当する55巣で成鳥を見る事が出来ました。こちらも昨年の63%に比べると高い値です。船越大島、三貫島共に今年は巣の利用率が高い模様です。

今回、2つの島を見る事により、予想していたのとは違って、津波はあまりオオミズナギドリ繁殖地に対して悪影響を与えていなかったということがわかりました。今後、孵化率や雛の成長速度、雛の巣立ち率や親鳥の採餌旅行経路などを調べていくことにします。次回の調査は8月の予定なので、またその結果をご報告しようと思います。

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覚悟の瞬間 東京大学 大気海洋研究所 佐藤克文

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